ごあいさつ

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社会健康医学系専攻
専攻長・議長 木原正博

20世紀の医学は、その世紀の最初には誰も予想できなかったほどの大きな発展をしました。その前半は公衆衛生面での発展が主で、後半は分子生物学の発展が著しかったと言えるでしょう。とくに、最後の数十年間は医学研究における分子生物学的アプローチが普及し、遺伝子レベルでの研究が日覚しい成果を挙げる中で、医学の社会的応用としての医療にも細分化と分析的な考え方が浸透してきました。そのことは、医療に携わる個々人の価値観、さらには医療のシステム構築にまで大きな影響を与えてきました。同時に、疾病および人口構造の変化、人権意識の高まり、InformationTechnologyの発展、グローバリゼーションなど、医療を取り巻く社会の様相も大きく変ってきました。

このような状況下で、医療と社会との接点はより密接に、かつ幅広いものとなりつつあります。医療のシステムに直接関わる政策や経済、倫理の問題、ヒトゲノム解析後の医学研究と医療のあり方、感染症をめぐる国際的な問題、ヒトの行動を規定する社会的要因や心理、環境衛生や生態の変化など、今後の医療と国の行く末にまで大きな影響を与えるテーマが山積しております。また、限りある資源をいかに有効に用いるべきかという視点から病院や医院で行われている診療そのものの効果・効率性を評価する必要性も従来に増して高まり、そのような評価に不可欠な方法論である疫学や統計学の重要性も再認識されつつあります。さらには、社会的存在であるヒトの健康や疾病を扱う医学と医療には、「健康の意義」、「個と集団」、「個人と社会」、「細分化と統合」などの倫理・哲学的命題も内包されています。

2000年4月に、わが国で始めての専門大学院として本専攻が設置された目的は、このような医療と社会をめぐる、困難ではありますがチャレンジングな、さまざまな課題について、実務を担当できる人材を養成し、教育、研究を行うことにあります。2003年4月からは専門職大学院となり、高度専門職養成の目的がより明確となりました。教授陣はわが国のトップクラスの意欲あふれる方ばかりです。入学された大学院生のバックグランドは医学や看護、薬学といった医療に関わる分野だけでなく、数理科学、農学、経済学、法学、文学など、多岐にわたっています。そのことが活気溢れる学習環境を作りだし、結果として、将来にわたるユニークな人的ネットワークが形成されつつあります。

専攻設立10年が経過し、高度専門職業人としての知識と技能、態度を身につけた本専攻の卒業生が、国内外の社会健康医学の分野で縦横に活躍し始めています。今後のさらなる発展を期待しています。